2022年3月27日日曜日

池猫

 

 

池猫と呼んでみる

沼猫でもいいかもしれない

いや

どこの水にもいそうだから

水猫というほうが

ひろく役に立つ言い方かもしれない

 

そもそも

そこが池なのか

沼なのか

呼びわけに

ちょっと迷う

 

とりあえず

池猫と呼んでおこう

 

そこの池に

夜中に行こうとなった理由は

もう

思い出せない

 

大きな池である

 

とにかく

夜中に行って

池の端のほうを見ながら

立っている

 

水の流れがあまりないところで

澱んでいる

汚れが水面にある

小さな油の輪のようなものが

ところどころにある

 

むこうのほうから

水中を

白猫が近づいてきた

真っ白な猫で

顔が笑っている

口は上弦の三日月のようだし

目は下弦の三日月のようで

ずいぶん大げさに描いた絵のような

笑い顔である

 

水中を

それが近づいてくる

 

こちらに向かってくる

 

いっしょに来た数人で

 

―これが池猫ですか?

―これが池猫ですよ

―これがねえ・・・

 

などと

ことばを交わす

 

もうすぐ

こちらの足元まで来そうだが

まだ

着かない

 

近づいてくる

 

向かって来ている







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