2022年3月18日金曜日

三つ巴の龍の雲


 

佐藤愛子の娘で

多くの心霊現象を考えてきた

杉山響子という人が

龍神を見たことについて書いている*

 

しし座流星群を見ようとして

家族で夜空を見上げているうち

天頂に近い空に

線香の煙を思わせる

真っ白い雲が浮かんでいるのが見えた

引き延ばしたバネのような

間延びしたS字形をしていたという

夜空で

雲が真っ白く見えるわけがない

 

見ているうちに

S字型はほどけて伸び上がり

空の高みへ長い身をくねらせて

かき昇っていく

龍だったのだ

 

よい経験のように思えるが

こういうことに詳しい寺の住職は

「そういうのは見ないほうがいい」

と言ったという

筆者本人も後になって

「どんなにつらくとも私はそばにいる」

という意味で

龍神が姿を見せてくれたのだったろう

と理解するようになった

というのも

この龍神を見てから

ながいこと

家族にはたいへんな苦難続きで

筆者本人も不安神経症や

パニック障害になって苦しんだためだ

 

ぼくはこの話にピンと来た

同じような経験をしたことがあったからだ

ながいこと

ぼくにも意味はわからなかったが

今になってみればわかる

「どんなにつらくとも私はそばにいる」

という意味で

龍が姿を見せてくれたと思うと

いろいろわかってくることがある

 

2009年3月11日の午後

ぼくの手で長年確定申告手続きをしてきた

エレーヌ・グルナックの確定申告書を提出するために

梅ヶ丘の北沢税務署に向かっていた

その途中の光明養護学校前の道で

北の空にふいに奇妙な雲が出現したのを見た

空高くではなく建物の間近のすぐ目の前だ

はっきりと三つ巴の龍が輪になっていた

三つ巴の龍の雲はすぐに消滅したが

それでも携帯電話で写真を撮る時間はあった

 

すぐ目の前に出現した三つ巴の龍の雲は

当時のぼくにとっては瑞兆のように思えて

じぶんの霊能力や超能力などの伸張を

予言してくれるものかもしれないと考え

むしろよいものとして捉えていた

 

ところがこの年の5月の連休後から

エレーヌが末期ガンに罹っていることがわかり

翌年2010年10月末になくなるまで

エレーヌも周囲の彼女の友人たちも大変だが

ぼく自身の時間も力もまったくなくなるほどの

治療や介護に関わる激務の中に投げ込まれることになった

 

ぼく自身の確定申告書提出は

エレーヌのものより先に他の日に済ませているので

3月11日に出現した三つ巴の龍はやはり

エレーヌに関わる近未来を知らせるものだったのだろう

どんな病気でも末期と宣告されるような時期には

これまで生きてきた現世は心の支えにはならなくなる

そこへ非現世の現われかたで龍が出現すれば

現世とは違う世界の存在がおのずと感知されてくるので

現世への別れをする瞬間までの心の支えができる

大切なのは現世での物語を最後まで維持させることなので

ひとに応じて神霊は表象を示してくることがあるのだ

 

当時は一日一ページの手帖にメモを付けていたので

さまざまなことについて詳細なメモが残されている

4月9日(木)の短いメモに今となっては注意を引かれる

ぼくは毎日のように水晶やカードやタロット占いをするが

「日本に大地震が来る、と占いで出る」

とこの日のメモにははっきり記されている

19時から20時頃には地底からの大きな波動を感じてもいた

エレーヌも水晶の振り子を使って100%当てる能力者だったが

このことを9日の夜遅くに電話して伝えたら

彼女のほうは18時頃に大地震の接近を感じていたという

ガンだと宣告される一月半前のことだったので

エレーヌは自分自身に襲いかかることになる大地震も

感じとっていたのかもしれない

もちろん2011年3月11日の巨大地震の発生まで

2年ほど間があるわけだが

占いにおける時間の確定は非常に困難で

数年のずれは誤差と考えるのが通例になっている

 



*杉山響子『物の怪と龍神さんが教えてくれた大事なこと』(廣済堂出版、2020)





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