お年寄りのその女性のはなし
なかなか
徹底していた
孫がいるのだから
オバアチャン
と呼んでかまわないだろう
七十前から身辺整理をはじめ
七十二になる頃には
身のまわりに
もう無駄なものはなかった
ものというのは
ちょっと油断すると
すぐ増える
無駄なものに
囲まれるのはもう嫌だと
家に入って来たものは
すぐに手放すか
捨てるように習慣がついた
年始や誕生日祝いに
ときどき孫たちから
カードや手紙や
プレゼントが来る
それらも着くや否や
一瞬のいのち
読んだら直ちに破り捨て
あっという間に
ゴミ箱の中
おかあさん
さすがにそれは…
と娘たちが言っても
なに言ってんの
ちゃんと読みました
それで捨てて
なにが悪いの?
一度など
手渡しでカードをくれた
孫の目の前で
即座に破り捨ててしまった
わざわざ色鉛筆で彩色し
きれいな絵を描いて渡した孫には
複雑な学びの機会となった
逡巡もしなかった
オバアチャン
もちろん反省もせず
あたり前のことをした様子で
うれしかったわ
きれいな絵を描いてくれたわね
オバアチャン忘れないわよ
やっぱりカードに
ああいう絵を描くの
いいわよねえ
0 件のコメント:
コメントを投稿