2017年9月13日水曜日

きみが絶対に認めない文字の並べ方をしながら



やってみればすぐわかる
白い紙を広げ
白い「文書1」を広げ
文字を置いていってみようとすれば

(すぐに
(しかも
(いつのまにか
(ごくごく
(あたり前のことのように

きみは
思いや考えを
文字の並べの上に
載せていこうとしてしまっている
文字はたゞ並んでいけばよく
どんなきまりにも
理屈にも
従わなくていいというのに
きみは
いま意識に浮かぶ
思いや考えに沿って
文字を並べていく陥穽に
すぐに
嵌っていってしまう

あたりまえじゃないか
文字は
思いや考えを
載せていくためのものだもの

きみは
たぶんそう思う

それは
間違っていない
それはきみの世界の確定のしかただし
それがきみの世界だ
そして
きみの世界は
そこで終わってしまう
思いや考えを
載せていくのが文字
という
きみの定め方の
一ミリ外に
もう
きみの世界はない
きみは間違っていないが
そのようなあり方で間違っていないということが
きみの世界の終わり

きみのような
世界の終わりを望まないから
ぼくは
思いや考えのはずれを
ほぐれを
いつも探しながら
ほとんど盲目で
文字並べをしていく

きみから見れば
ぼくは
たぶん間違っている

ぼくを間違っているときみが見る時
ぼくは
きみという世界の終わりを見ていて
きみの弔いをしている
きみが絶対に認めない文字の並べ方をしながら

ぼくがきみであり得ず
きみがぼくであり得ず
ちょっと前の
感傷的な世代たちのようには
それを悲しいとも
問題だとも思わず
きみと融合できればよかったなどとはもちろん思わず
理解しあう
などという奇妙な抒情詩にも
傾かず

たゞ
時間をぼくだけに向けての
しっかり手触りのある
なにかに
ほんのちょっと
変容しようと努めながら

臨終間際の人が
布団の端を
長い生の時間の果ての世界の総体そのもののように
弱々しく握りしめ
それで
すっかり満足して最期の息を解放してやるように



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