ながくながく
歌謡界を席巻し続けた有名な作詞家が
晩年
じぶんの本当の思いを吐露し
詩を書いた
それを見てみたら
酷かった
その作詞家の
あれほどの言葉づかいの才能が
どこにも見られなかった
なにも書いたことのない青年が
はじめて思いのたけを
慣れない手つきで
並べていったような文字の並びだった
フィクションや
仮面というものの
なんというありがたさ
力の引きよせ
じぶん
などというものも
フィクションで
仮面に過ぎないけれど
とりあえず
じぶん
などと呼べるその虚構を使って
まるで
すこしは本当の思いを語っているかのように
しかも
効果的に
言葉並べをしていくのは
これはこれで
至難のわざ
…もちろん
できなくってもいい
そんなことは
つき合わなくってもいい
そんなものには
じぶんの
じぶんの
じぶんの
じぶんの
じぶんの
じぶん
………
あたりの
じぶん
とだけ
つき合っていればいい
のだが
なかなか
出会えないのだよね
こいつに
だから
うそっぱちの
じぶん
や
借り物の
じぶん
他人たちの
じぶん
と
さんざんつき合い続けるのだよ
ね
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