ゆめからゆめへの彷徨のおわりごろ
わたしはそれでも小さな机を持ちつづけていられて
まわりには小山のような本の堆積があって
そのなかでせっせと読みつづけていた
とある晩も更けて
もう就寝しなければならないころ
世話をしてくれる中年の女性が近づいてきて
小さな本を手渡してくれた
驚くべきほどの本でもなかったが
しかしそれはなんと謹厳実直な思索で知られた
あまり面白くない思想家のまぼろしの童話で
少しめくってみるとずいぶん突飛な書きようだった
読み出すのはあしたからにしましょうと礼を言い
本を閉じたがまわりに雲集するたくさんの人たちが
わたしを取り囲んで本の内容を知りたがり気にしているので
ふたたび本を開いてわたしは目と意識を彼らに開放した
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