わたくしの風景

私はゆつたりとふほふくを取つて
おむれつ　ふらいの類を喰べた。
空には白い雲が浮んで
たいそう閑雅な食慾である。

萩原朔太郎「閑雅な食慾」

めったに食べないのだが

コンビニの安いシュークリームが

なんでだろう

ちょっと食べたくなる

ほんのちょっとだけ高い

デラックスっぽいのを

ひとり

さびしくもなく

買って

小さなレジ袋に入れてもらって

ぷらぷら

揺らしながら

持って帰る

小さなカップに

インスタントコーヒーを

できるだけ

おいしくなるように

まずは水をちょっと注いで

粒の皮膜を溶き

湯ができあがると

湯量にいたく注意して

旨く旨く淹れる

シュークリームは

すこし大きめの白い皿に載せ

なんだか

ごたいそうな頂き物のお菓子のように

ふわぁっと生地を割ながら

とろりと

クリームを皮ですくい取って

口に運び始める

適度に

じゅうぶんに

とっても

旨い

のんびりと

ゆたかな

この夏

くれがたの

ひとりの

わたくしの風景である