2019年9月19日木曜日

殺されるために生まれてくるひと


  
殺されるために生まれてくるひとがいる
無視されるために生まれてくるひとがいるように
土台もハシゴもたえず外されるために生まれてくるひとがいるよう
仕事の途中でじゃまされ続けるために生まれてくるひとがいるよう

宿命はいつも透明で
エアコンのほどよく効いた清潔な部屋の
やすらぎのひとときのように
ひとを透明な屠殺場に
いつのまにか
導いていく

そんなことを
また
思いながら
茶室を出ると
楓林

まだ葉はみどり滴るばかりで
紅く染まるには
まだ
間がある

宿命の
楓林の燃え上がるような紅に
殺されるために
生まれてくるひと
わたし
となるか

晩秋




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