2021年2月17日水曜日

軒端の梅はわれを忘るな


 

あゝ きれいな梅の花……

 

でも

こうして眺めている

今日という日も

いずれは

昔のとある日ということに

なっていってしまう

 

それでも

軒端の

うつくしい梅よ

 

今日という日が

もうすっかり

昔となってしまって

こうして

いま

おまえを眺めている私も

とうにいなくなってしまっているはずの

未来の春の日々にも

どうか

忘れないでいておくれ

 

こうして

私が見ていたことを

 

こうして

見ていた私のことを

 


 



 

百首歌たてまつりにしに、春歌

式子内親王

ながめつるけふは昔になりぬとも軒端の梅はわれを忘るな

『新古今和歌集』巻第一 春歌上 五十二






0 件のコメント: