叔父のひとりが死んだので
葬式をした
本堂での葬儀の後
寺のStaff Onlyな部屋の奥のほうから
鈴虫の音が盛大に聞こえてくる
昨年のことだそうだが
浄土宗があちこちの寺に鈴虫を配ってきたので
もらったものを飼っていたら
今年はどんどん増えて特大6ケース分が
盛大に合唱をしているという
ちょっとお持ちになりますか?
というので
それはうれしいなあ
と曖昧に答えておいたら
精進落としの後
本当に小さめの昆虫観察小ケースを手わたされ
中を見ると10匹ぐらいが入っている
家に帰ってケースを置いてみると
しばらくはウンともスンとも鳴かなかったが
そのうち音色が聞こえて来はじめた
都心の高層の自宅で本物の鈴虫が聞けるとは
なんとも贅沢なことではないか
入れてもらったケースは
10匹を飼うには小さく見えるので
もっと大きなケースを買い
鈴虫を飼うのに適したものも揃えようと思い
ネットであれこれ探しはじめると
鈴虫飼育用のさまざまな商品が
いろいろと準備されているのを知った
虫好きだった子どもの頃に
もちろん鈴虫もコオロギも飼ってみて
いろいろと成功も失敗もしたので
今回は失敗をしないようにと
鈴虫の飼い方の勘どころを調べてみると
そういう知識もネットには溢れていて
近ごろの子どもはいいなァと思う
ともあれ
葬儀の終わった日で
はやく寝たい夜だというのに
鈴虫飼育のことにかまけて
いつのまにか深夜を過ぎてしまった
予期もしなかったことながら
これからは鈴虫の世話で忙しくなるのだろう
死んだ叔父のことなど
もうどうでもいい感じだが
死んだ人がよく蛍とか蝶になって訪れるという
あの話に沿いながら考えると
10匹ばかりの鈴虫となって
わたしの手元にやってきたのかなどとも
思えないこともない
それにしても
ちょうどよい霧吹きさえも
買い直さねばならなくなったり
湿り気を与えるために吹きかける水は
塩素の入っている水道水ではダメだと学んだり
見ようによってはゴキブリと大して変わらない連中なのに
たかが虫を飼うにもやけにコマゴマと忙しくなる
もっと大きな動物を飼うよりは楽だろうが
それでもこれからは
アタマのどこかでいつも鈴虫を考えて
なにを思うにも考えるにも
スズムシスズムシスズムシでやっていくのかと思うと
こういう世界変貌のかたちも
あるというわけか
と気づき直したりする
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