煙草を
じぶんは吸わないのに
吸う気にもならず
健康によくないとも思うのに…
と
若い人が
言っていた
小津安二郎の
『浮草』の
映画のお終いのところで
京マチ子が演じるすみ子が
中村鴈治郎の演じる駒十郎の煙草に
火をつけてやる場面
なぜ
あれほど
魅力的に見えるのか
と
ぼくも
煙草
とうの昔から
吸わなくなったけれどね
煙草
いいと思ったことも
ないけれどね
でも
ある程度以上の
繊細さを帯びるようになった文化は
言葉で言いづらいような
思いや感情を
それとなく伝え
漂わせる
小さな道具を
あれや
これやと
備えるようになるもの
煙草というのも
そんな道具だったのでしょう
煙草に火をつけるだけで
ひとくち
煙を吐き出すだけで
どれだけ
贅言しないで済んだことか
どれだけ
ものを書かないで
済んだことか
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