家族はみんなで出払って
どこかのレストランで食べてくるのだろう
ぼくはひとりでうちに残って
やわらかい鶏肉か
やわらかいハンバーグを焼いて
豪勢なナイフとフォークで食べているところ
食具を「豪勢な」などと呼ぶのもヘンだが
長さが50㎝くらいあって
しかも刃を金属の枠が複雑に支えていて
ちょっとしたノコギリを扱う巧みさが要るのだ
フォークだって50㎝くらいあると
なかなか扱うのにコツがいる
まあ
今夜は時間があるから
そんなナイフとフォークでもいい
ぼくは畳の上の低いテーブルを前にして
おいしそうに焼けた大きな肉を
ナイフで切り始めながら
家族たちは今ごろなにを食べているだろう
と静かな室内で思ったりしている
豪勢なナイフとフォークで食べようとしているのは
やわらかい鶏肉か
やわらかいハンバーグなのだが
どちらだかまだわからない
さっき自分で焼いたはずだというのに
やわらかい鶏肉か
やわらかいハンバーグか
まだわからない
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