肉体を持っているあいだは
ふつうの生活の極意は
素食と素衣に限ると思う
この世の生はつかの間の宴だから
豪勢に食べたり
着飾ったりする時があっても
かまわないだろう
しかし
豪勢に食べ続ければ
内臓は疲弊する
疲れて動きたくなくなることが増えれば
筋力は衰える
そうなれば
ふやけた肉体から来る疲労と倦怠が増すので
おのずと素食に傾く
着飾るのは
色とかたちと肌触りの楽しみで
さらには
他人の目への忖度や
おのれの内なる他人へのより深い忖度だが
続けているうちに
色とかたちと肌触りの楽しみにも飽き
他人の目への忖度には疲れる
しかも
世間の流行の変遷の
あまりのはやさに
むなしさとさびしさは募る
そんな変遷の従僕に過ぎなかったと
いずれは気づく
そうして
素食と素衣に戻っても
時どきは
軌道を逸れてみるだろう
逸れてみて
やはり
「逸れた」
と思う
死ぬ時には
生そのものが
ちょっと長い逸脱に過ぎなかったと
気づくだろう
空気を吸い
水を飲むことそのものが
豪勢な食事で
肉体を持つことそのものが
着飾りだったと
気づくだろう
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