2025年1月17日金曜日

素食と素衣

 

 

 

肉体を持っているあいだは

ふつうの生活の極意は

素食と素衣に限ると思う

 

この世の生はつかの間の宴だから

豪勢に食べたり

着飾ったりする時があっても

かまわないだろう

 

しかし

豪勢に食べ続ければ

内臓は疲弊する

疲れて動きたくなくなることが増えれば

筋力は衰える

そうなれば

ふやけた肉体から来る疲労と倦怠が増すので

おのずと素食に傾く

 

着飾るのは

色とかたちと肌触りの楽しみで

さらには

他人の目への忖度や

おのれの内なる他人へのより深い忖度だが

続けているうちに

色とかたちと肌触りの楽しみにも飽き

他人の目への忖度には疲れる

しかも

世間の流行の変遷の

あまりのはやさに

むなしさとさびしさは募る

そんな変遷の従僕に過ぎなかったと

いずれは気づく

 

そうして

素食と素衣に戻っても

時どきは

軌道を逸れてみるだろう

逸れてみて

やはり

「逸れた」

と思う

 

死ぬ時には

生そのものが

ちょっと長い逸脱に過ぎなかったと

気づくだろう

 

空気を吸い

水を飲むことそのものが

豪勢な食事で

肉体を持つことそのものが

着飾りだったと

気づくだろう




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