夏まつり 宵かがり
胸のたかなりにあわせて
八月は夢花火 わたしの心は夢模様
井上陽水の『少年時代』は
このように歌う
夏だけが好きなわたしが
いちばん思い出すのは
田園そのものの環境のなかで
少年時代のはじめを過ごした
愛知県の岩倉の夏の祭りのこと
見わたすかぎりの田んぼのなかに
一区画だけ新設された
真新しい岩倉団地の高い給水塔のわきで
団地の盛大な夏まつりが催されたが
当時流行ったオバQ音頭がくり返し鳴って
子どもたちにとっては
夕方から数時間はまさに夢花火だった
小学校から団地の家までのあいだに
田んぼがひろがり
川や小川や畔がいくつも延び
虫もカエルもヘビもドジョウもザリガニも
無限に取り放題の環境は
どこの遊園地も実現できない
子どもの天国だった
父の転勤で9歳で関東に戻ってきたが
東京周辺の環境のあじけのなさは
幼いわたしには非常なショックだった
関東にももちろん緑はあり
近くの野山に分け入り続けたが
中部地方の緑の鮮やかさや生命力には
東京周辺のの緑は遠く及ばない
そして東京周辺の街のつくりかたが
どうしても我慢できないほど不快で
それらが言葉にできないほどに苦しかった
9歳で楽園喪失を経験したわたしは
どのようにして生きのびてきたのだろう?
そう思いながら東京を見つめるわたしは
東京の外にこそ楽園があると知る
東京人であり東京異邦人である
東京にしかアイデンティティーはないながら
東京以外にこそ楽園があるのを知り
東京を拒否し苦しみ続けている異邦人である
https://www.youtube.com/watch?
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